明治の頃の日本。とある貧しい農家に生まれた大木鈴は、凶作にあえぐ家族を救う為に年季奉公に売られた。しかし奉公先へ向かう道中に崖下へと転落してしまった鈴は気付いたときには真っ黒な海を目にしていた。そこは虚海と呼ばれる海。鈴は触によって十二国の世界へと渡ってしまったのだ。
言葉の通じない鈴は、旅芸人に預けられて生活するようになった。そして一座が公演を行っていた街で鈴は翠微君と呼ばれる女性と出会い驚かされる。鈴は梨耀の話す言葉が理解できたのだ。ようやく言葉の通じる人に会えた喜びと、言葉が分かりさえすれば笑われて暮らさなくても良いのだという思いで、一緒に連れて行って欲しいと懇願する鈴。梨耀は望みを叶えてくれた。だがその結果、鈴は百年余りに渡って翠微洞と呼ばれる場所で下働きをする羽目になってしまう。
一方、鈴と同じ年頃ながら、対象的に芳極国で華やかな王宮暮らしを送っていた祥瓊。彼女の父である王は民のために様々な法を整備し国の規律を高めようとしたのだが、あまりに苛烈な法の裁きは国の人口を激減させる事となり、王の半身である麒麟の身体は王が道を失い始めると陥るという失道の病に倒れていた。
そしてついにある時、各州を治める州侯達が反逆の兵を挙げ王宮へと攻め寄せた。父も母も殺され祥瓊はたった一人取り残された。そして彼女は仙籍から外され普通の人とされて、とある里に送り込まれる。右も左も分からない世界で三年の年月が経ち、祥瓊は自分の変貌した姿にただ悲鳴を上げるしかなかった。
そして、彼女らと同じ年頃で慶国の新たな王となった陽子。陽子もまた王としての自分に悩み苦しんでいた。誰にも言えない不安を抱える陽子に、刻限を告げる声が掛かる。今日は陽子が国民や他国の賓客に新王としての姿を披露する――即位の儀式の日だったのだ。分厚いカーテンで囲まれたベランダに立つと、怒号のような歓声が陽子を包み込む。この日、陽子は国民を前に慶東国の玉座についたのだった。