雁国首都、関弓山の麓に展開した大学。そこに楽俊の姿があった。陽子が景王として登極した頃、楽俊は延王の配慮があって大学への受験を許され、合格に向けて精一杯勉学に取り組んだ。その結果が現在に至ったのだ。
大学に通っている者には各々専用の寮があり、その内の一つである楽俊の部屋に向かって鳳凰を思わせる鳥が舞い降りてくる。その鳥は以前、陽子が延王から賜り楽俊に預かって欲しいと頼んだ、人の声を運ぶ鸞鳥(らんちょう)だった。鸞鳥は凛とした女性の声で語り始めた。
その声の主は慶国首都、堯天山の頂上にある金波宮の玉座に座った新王・陽子だった。陽子は自分の居住となる金波宮にもようやく慣れてきた所で、自分を取り巻く官吏達とも揉める事なく執務を行っていた。しかし景麒からは国の「威儀」や王の「威信」等の小言を始終言われ続けていた。
また陽子には、どうしても巧国に行って会いたい人達がいた。それは楽俊が一番気になっている筈の母親だった。巧国に出むいた陽子は久しぶりに平伏しない人に会えたことがとても嬉しく、楽しい一時を過ごせることができた。さらに陽子はとある村を訪れ塙王の太子と公主にも会う。そこで陽子は浅野が生きているかも知れないという情報を得た。それら楽俊への報告の最後で陽子は、ようやく決まった即位の儀式に是非来て貰いたいと告げるのだった。
陽子の元へ楽俊からの返事を持った鸞鳥が戻ってきた。楽俊は大学では友達や先生にも良い人が多く、蔵書にしても豊かで食事も美味いと快適に暮らしていることを告げてきた。そして陽子の即位の儀式には、必ず来てくれると約束してくれた。だが陽子は楽俊が何もかも上手くいっているとは思っていなかった。
これから荒れようとしている巧国に一人残してきた母親のことが心配でない筈が無い。雁国が半獣を平等に扱うといってもそれは制度の上であり、実際全ての人がそうであるとも限らない。一方楽俊もまた陽子が全てが上手くいっているとは思っていなかった。お互いの事を理解し、なおかつ思いあっているからこそ二人は親友になれたのだ。
陽子は楽俊にもう一度鸞鳥を飛ばす。即位の祭に慶国の元号を改めるのだが、陽子はその元号を「赤楽」とすることにしたこと。そしてそれは官が陽子につけた赤子という字と楽俊の名から貰った一字を足したのだという大事なことを伝えるために。